江戸の刑事司法 「御仕置例類集」を読みとく 和仁かや著

 タイトルにある「御仕置例類集」とは18世紀半ばから19世紀にかけて幕府が作成していた、刑事裁判の判例集みたいなものである。江戸期の法典といえば「暴れん坊将軍」で有名な八代徳川吉宗が制定した「公事方御定書」である。不義密通は死罪、文書偽造は獄門、いわゆる「十両盗めば首が飛ぶ」というあれだ。

 しかし実際の運用はどうだったか。「御仕置例類集」を繙くと、いくら罪人とは言えヒト一人の命を奪うような審判を下すということ、当時の役人にとっても容易いことではなかったらしい。いや、江戸のサムライも我々と同じ血の通った人間だったということである。

 本書は「御仕置例類集」から五件の事件を取り上げ、実際にどのような犯罪に対しどのような経緯でどのような審判が下されたかを紹介し、江戸の刑事司法の実態を解説したものだ。取り上げられている実例は、商家の女主人と使用人の恋といった現代では刑事事件にならないものから、乱心しての親殺しといういわゆる「責任能力」を問うようなものなど。

 時代劇でよく言われる刑罰、磔、獄門、死罪、遠島などの実態も興味深いが、江戸のみならず地方(の幕府領)で発生した事件でも、死罪以上の刑罰を下す判断には現地代官などの一存ではなく江戸の老中まで書状で伺いを立て裁定を仰いでいる慎重さである。なんつうか、江戸の役人は結構マジメでちゃんとしていたのだなぁ。


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