パソコン通信を題材にした恋愛映画,なんかえらい昔の話のように思えますな。公開当時は結構話題になったと記憶しているが,その世界にどっぷり漬っていたオレは観る気にならなかった。
これ以前に…題名は忘れてしまったが,同じような筋立てのテレビドラマがあって(確か通産省が協賛かなんかしてたと思う),これがあんまりにも馬鹿馬鹿しい内容だったので,これもあの類いかと食指が動かなかったのだ。いや,ホントにそのドラマは馬鹿馬鹿しかったんだよ,若くて今で言えばイケメンの兄ちゃん(俳優,忘れた)がコンピュータ・エンジニアでさ。
とにかく「(ハル)」の話。パソコン通信を始めたばかりの(ハル)こと速水昇(内野聖陽)は,映画フォーラムのRT(リアルタイム会議,チャットのこと。フォーラムもこれも言ってみれば「ニフティ方言」なので,この映画の脚本が当時のニフティサーブを念頭に書かれたことが判る)で,(ほし)と名乗る人物(深津絵里)と知りあいメールをやりとりするようになる。
最初男性の振りをしていたほしだったが,やがて自分が盛岡に住む女性であることを明かす。ハルも恋人と別れたことや仕事のことなどを書き送り,二人は互いに精神的に支えあうようになっていく。
そんなある日,ハルは(ローズ)というハンドルの看護婦(戸田菜穂)と知りあい,実際に会う約束をする。ネットでもナマの会話でも平気で男女間の際どい話題を好む彼女だったが行動は慎重。でもハルは,会ったその日にセックスをした,とほしに嘘のメールを送ってしまう。一方,1年前に交通事故で恋人を亡くしたほしは,彼との共通の友人・戸部(竹下宏太郎)の積極的なアプローチに困惑,職を変えて彼から逃れようとしているところだった…。
画面一杯に文字だけを出すという,当時としては斬新(つうかこれ,無声映画への先祖返りなんだけどね)な演出はさすが。本当に新幹線の中からハンディカメラで撮ったと思われる「白いクルマに赤い服の女」の映像の使い方など絶品だし,ネットだから吐露出来るものとネットゆえに吐露し得ないものの微妙なバランスを繊細に表現した脚本も美しい。
もっと前に観ておくんだったかな。……う,つうことは同じように観る気の起きなかった「電車男」(村上正典監督)も意外にいいんだろうか? うーん(結局今に至るまで観てない)。
