ブラック・ダリア ブライアン・デ・パルマ監督

 ジェイムズ・エルロイの「暗黒のL.A.4部作」(「ブラック・ダリア」「ビッグ・ノーウェア」「LAコンフィデンシャル」「ホワイト・ジャズ」)の皮切りの映画化。1940年代後半のロス・アンジェルス。ボクサーをやめて警官になったバッキー・ブリチャード(ジョシュ・ハートネット)は,先輩でやはり元ボクサーだったリー・ブランカード(アーロン・エッカート),その恋人であるケイ(スカーレット・ヨハンソン)と「親友」になる。

 特捜課に配属された2人はロス・アンジェルスに現れた強盗犯を追うよう命じられるが,その現場近くで若い女の惨殺死体が発見されるとリーの態度が一変,まるで取りつかれたようにこの事件を追いつづけ,やがて謎の死を遂げてしまう。リーを護れなかったことを負い目に感じるバッキーは地味な捜査を続行するのだが……。

 男女を問わず登場人物がやたら煙草を吸うことを含め,1940年代のリアリティはさすが。エルロイの「どいつもこいつも小説」をデ・パルマがかなりうまく「調理」している。なんてのかな,てのは,原作読んでから10年くらい(もっとかな?)経つのではっきりしたことは言えないが,小説ではバッキーだってケイだってこんなイノセントな感じの人物ではなかったと思うのだ。

 ジョシュ・ハートネットとスカーレット・ヨハンソンにアクがなさすぎってだけしゃなく,映画の場合観客が誰にも肩入れできないとヒットは望めないってのもあるぢゃないかな,と。なお,この小説,映画のネタにされた実際のブラック・ダリア事件,すなわち1947年のエリザベス・ショート殺人事件は,今に至るまで未解決のままである。


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